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◆◆◆ 陸軍省副官発北支那方面軍及中支派遣軍参謀長宛通牒 ◆◆◆
(現代語訳)
副官より、北支方面軍及び中支派遣軍参謀長宛 通達案
支那事変地に慰安所を設置するために、内地において従業婦(慰安婦)を募集するにあたり、
・ことさらに軍部了解などの名目を利用しその結果、軍の威信を傷つけると同時に一般民の誤解を招く、おそれがあること
・従軍記者や慰問者などを介して統制なく募集し(その結果)社会問題を引き起こす、おそれがあること
・募集の職務に任じる者の人選に適切さを欠くために、募集の方法が誘拐紛いで警察当局の検挙・取調べを受けたこと
(そのような事柄)がある等、注意を要することが少なくない。したがって、将来、これら(慰安婦)を募集するときには、
(慰安婦の募集を)派遣軍において統制すること
・これ(慰安婦の募集)に任じる人物の選定を周到適切にすること
・その(慰安婦の募集)実施にあたっては、関係地方の憲兵及び警察当局との連携を密にすること
・そのようにして、軍の威信保持並びに社会問題の面で手落ちがないように配慮して頂きたい依命通達する。
陸支密七四五号 昭和十三年三月四日
【解説等】
上記の「陸軍省副官発北支那方面軍及中支派遣軍参謀長宛通牒」(※以降、副官通牒と称します)は、1992年1月11日付の朝日新聞でスクープされたものです。
以降、強制連行肯定派には強制連行の証拠として取り扱われ、一方、強制連行否定派には「誘拐まがいの違法な募集をしている者がいるから取り締まれ」と注意喚起を促しているだけだと主張されています。
なお、この副官通牒に関する論説で、インターネット等でよく取り上げられているものを以下に紹介します。
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「日本軍の慰安所政策について」 永井 和(京都大学文学研究科教授)
(要約) ※詳細は上記リンク先を参照下さい
1)日本国内警察資料に登場する慰安婦募集活動には詐欺や拉致、拐取は一例もない
2)よって、副官通牒が出された目的は詐欺等を取り締まるものではない
3)当初、警察にとって、軍による慰安所の設定とその要請を受けた業者の慰安婦募集は「皇軍ノ威信ヲ失墜スルモ甚シキモノ」で信じがたいことであった
4)副官通牒のねらいは、慰安婦の募集と渡航を容認・合法化し、あわせて募集活動に対する規制を行うことと、
5)警察資料に「軍ノ諒解又ハ之ト連絡アルガ如キ言辞其ノ他軍に影響ヲ及ボスガ如キ言辞ヲ弄スル等ハ総ジテ厳重ニ之ヲ取締ルコト」とあるように、慰安婦の募集周旋において業者が軍との関係を公言ないし宣伝することを禁じることであった
(結論)
副官通牒は、軍の依頼を受けた業者による慰安婦の募集活動に疑念を発した地方警察に対して、慰安所開設は国家の方針であるとの内務省の意向を徹底し、警察の意思統一をはかることを目的と出されたものであり、慰安婦の関係を隠蔽化するべく、募集行為を規制するよう指示した文書に他ならない。
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永井教授は、日本国内の警察資料を調査して上のような結論を出されているわけです。
しかし、資料「朝鮮半島における慰安婦募集の広告」にあるように公然と新聞広告で慰安婦が募集されており、「軍と慰安婦の関係を隠蔽化する為だった」という結論に反しています。
つまり、この永井教授の論説が仮に正しいとしても、せいぜい日本国内でしか通用しないものであり、この論説をもって「朝鮮半島でもそうであったはずだ」と主張したり、「やはり副官通牒は強制連行の証拠だ」等と主張できないのです。朝鮮半島では、この論説の結論が事実に反していたのですから当然です。
そもそも論で言えば、「朝鮮半島」での強制連行の有無が争点となっているのに、「日本列島」の資料だけ見て議論しても意味がないでしょう。
また、この論説は、「無かったこと」を前提に議論を進めているものであり、非常に不安定で綱渡り的な理屈です。「無かったこと」を証明するのは、「有ったこと」を証明するより遥かに困難なことであり、1件でも「有ったこと」が証明されれば、すぐに吹き飛んでしまいます。
しかも、永井教授は最初に、「内務省は主として現在知られている警察資料に含まれている諸報告をもとに、前記警保局通牒を作成・発令し、さらにそれを受けて問題の副官通牒が陸軍省から出先軍司令部へ出されたのである」という作業仮説を大前提として提示しています。つまり、例えば、「慰安婦の検査をしている軍医から『詐欺にあって慰安婦にさせられた者がいる』という報告を受けて副官通牒が出された」等という可能性は捨ててしまっているわけです。
永井教授の理屈のスタートは、何ら証明されていない単なる仮説。綱渡りどころの話ではありません。